そのシミ、実はカビかもしれません ― 見た目ではわかりにくい「癜風(でんぷう)」とは ―

そのシミ、実はカビかもしれません  ― 見た目ではわかりにくい「癜風(でんぷう)」とは ―

    一見「シミ」のように見える皮膚の変化でも、実はまったく異なる原因による疾患であることがあります。特に、短期間で出現した色素斑や、わずかな質感の違いがある場合には注意が必要です。今回は、シミとして来院されたものの、実際には真菌(カビ)による皮膚疾患「癜風(でんぷう)」であった症例をご紹介します。

    目次
  1. 1.シミだと思っていたら...実は「癜風」だった症例
  2. 2.癜風とは
  3. 3.シミとの違いと注意点
  4. 4.治療について
  5. 5.正しい診断が、美容医療の第一歩

1.シミだと思っていたら...実は「癜風」だった症例

「最近できたシミが気になる」そんなお悩みでご来院される方は少なくありません。今回ご紹介するのは、約1ヶ月前から胸元に現れたシミを主訴に来院された患者様のケースです。

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診察では、胸の谷間にあたる部分に1円玉大の茶色い色素斑を認めました。一見すると一般的なシミのように見えますが、よく観察すると表面にうっすらとした鱗屑(りんせつ:粉をふいたような皮むけ)が付着していました。この「わずかなカサつき」が重要な手がかりとなります。

発症からの期間や好発部位とあわせて考え、「癜風(でんぷう)」という皮膚の真菌症を疑い、鱗屑を採取して顕微鏡検査を行いました。その結果、マラセチア菌と呼ばれる真菌(カビ)の増殖が確認され、「癜風」と診断されました。

2.癜風とは

癜風は、皮膚にもともと存在するマラセチア菌が、皮脂や汗をきっかけに増殖することで起こる疾患です。特に、胸、背中、脇、首の後ろなど、皮脂や汗の多い部位にできやすいのが特徴です。

見た目は、茶色や白っぽい色の斑点として現れ、表面が少しカサつくことがあります。かゆみや痛みはほとんどなく、見た目の変化で気づかれる方が多い疾患です。

3.シミとの違いと注意点

癜風は見た目がシミに似ているため、自己判断が難しい疾患のひとつです。実際に、シミと考えてレーザー治療を受けてしまうケースもありますが、癜風は真菌(カビ)が原因のため、レーザーでは改善しません。このように、見た目が似ていても原因がまったく異なるケースがあるため、正確な診断が非常に重要です。

4.治療について

治療は、抗真菌薬(外用薬)が基本となります。適切に治療を行えば、通常は数週間から1ヶ月程度で改善が見込まれます。

5.正しい診断が、美容医療の第一歩

癜風は皮膚科では比較的よくみられる疾患であり、特徴的な所見を押さえていれば診断自体は難しいものではありません。しかし一方で、美容領域のみで判断される場合には見逃されることもある疾患です。

本症例は良性の真菌症であるため、仮にシミと誤認してレーザー治療が行われたとしても、重大な健康被害につながることは通常ありません。ただし、原因に対する適切な治療にはならないため、結果的に改善が得られないという問題が生じます。

一方で、色素斑の中には悪性疾患、すなわち皮膚がんが含まれる可能性もあります。このようなケースでは、診断の遅れが経過に大きく影響することが知られています。そのため、見た目だけで判断せず、必要に応じた検査を含めた適切な診断が重要です。美容医療においても、まず正確な診断があってこそ、適切な治療選択が可能となります。

当院では、日本皮膚科学会認定の皮膚科専門医が診察を担当し、医学的根拠に基づいた診断と治療をご提案しております。気になる皮膚症状がある場合は、自己判断せずご相談ください。