医師が教える夏枯れ肌を回復させるセルフケア【クレンジング・保湿・角質ケア】

医師が教える夏枯れ肌を回復させるセルフケア【クレンジング・保湿・角質ケア】

紫外線や冷房による夏のダメージが蓄積し、外気が一気に乾燥する秋は、乾燥やくすみなど肌の不調を感じる人が急増します。秋冬の本格的な乾燥シーズンに突入する前に、今こそ肌を土台から立て直し、冬の美肌に繋げましょう。

    目次
  1. 1.過酷な夏ダメージの蓄積で、秋の肌はゆらぎがち
  2. 2.肌を立て直すには、角質ケアと保湿が鍵
  3. 3.スキンケアと併せてライフスタイルの見直し

1.過酷な夏ダメージの蓄積で、秋の肌はゆらぎがち

そもそも、どうして秋に肌の調子が悪くなるのでしょうか。夏はただでさえ、暑さで食事のバランスや睡眠の質が低下し、運動不足で体全体の働きが悪くなりがちです。さらに紫外線や汗、皮脂による刺激が重なることで、肌のバリア機能が落ちてしまいます。こうした"夏の疲れ"を抱えたまま迎える秋は、空気の湿度が一気に下がり、肌の水分が蒸発しやすくなります。その結果、肌の乾燥が進み、肌トラブルが起こりやすくなるのです。では夏を過ごした肌の内側では何が起きているのかを、もう少し詳しく解説しましょう。

強烈な紫外線によりシミやくすみ、小ジワなどのトラブルに

大量の紫外線を浴びることで、肌の表皮ではメラニンが過剰生成され、真皮ではコラーゲンの分解とエラスチンの変性が起こります。メラニンが増えること自体は一種の防御反応によるものですが、蓄積すると色ムラやくすみに繋がります。また、紫外線は皮脂を酸化させて肌表面のバリア機能を低下させるため、肌のうるおいが不足します。

近赤外線による深部ダメージがたるみの原因に

肌の老化現象の約8割は「光老化」によるものと言われていますが、その中で近年注目されているのが、「近赤外線」によるダメージです。近赤外線は紫外線のUVA、UVBよりも波長が長く、真皮よりさらに深部にある脂肪組織や筋膜まで到達し、コラーゲンやエラスチンの生成を阻害することが分かっています。つまり近赤外線をダイレクトに浴び続けることは、肌のたるみに繋がるのです。

無意識に進んでいた夏の「隠れ乾燥」

夏は湿度が高く、汗や皮脂で肌表面がうるおっているように感じてしまい、つい乾燥対策を怠りがちです。加えて冷房による乾燥も進み、実は知らず知らずのうちに肌内部が乾燥している「隠れ乾燥」に陥っていることがあります。

2.肌を立て直すには、角質ケアと保湿が鍵

このように夏ダメージでバリア機能が低下した肌は、くすみやシミ、たるみなどあらゆる肌トラブルに繋がります。今一度、「落とす」「うるおす」といった基本的なスキンケアを見直して、肌を土台から整えましょう。

角質ケアを取り入れて、ターンオーバーを整えましょ

肌は紫外線ダメージを受けると未熟な角層が厚くなりやすく、水分を抱え込めずにゴワゴワしてしまいます。また通常メラニンは表皮のターンオーバーによって皮膚表面に押し出され、古い角質とともに剥がれ落ちていきますが、紫外線を浴びて過剰に生成されたり、加齢など何らかの原因でターンオーバーが乱れたりすると、体外への排出が追いつかず溜まってしまいます。これがシミやくすみの正体です。対策としては、酵素洗顔やレチノール入りのスキンケアを取り入れて、代謝を促すことが有効です。

クレンジングや洗顔はたっぷりと量をとり、摩擦を避けて

クレンジングや洗顔をする際に、少量でゴシゴシと洗ってはいませんか? 使用量が少ないと、物理的にこすって肌を傷つける可能性がありますので、量は多めにとり、こすらずやさしく落とすことを心がけましょう。お風呂の後や、スチーマーを使って温かく湿らせておくのも効果的です。毛穴の奥に固まっていた皮脂や汚れがゆるみ、落としやすくなります。帰宅後肌が冷たい状態のときよりも汚れ落ちが良くなるので、ぜひ試してみてください。

また、肌には「美肌菌」と呼ばれ、肌を健やかに保つために重要な役割を果たす常在菌がいます。美肌菌は皮脂や汗を分解し、肌のバリア機能を強化する役割がありますが、肌を洗いすぎることで菌のバランスが崩れると、肌荒れやニキビなどのトラブルに繋がります。そのため、洗いすぎや殺菌しすぎは避け、摩擦を抑えてうるおいを残す洗顔を意識しましょう。おすすめは、パーツごとに泡をのせる時間を調整する洗い方です。Tゾーンや顎先だけに泡をのせ数秒放置し、頰や目まわりはサッとひと撫でする程度に抑えます。最後は清潔なタオルで、こすらず肌を軽く押さえるように、やさしく水分を拭きとりましょう。

保湿はクリームなどで油分も補いましょう

季節を問わず、一年中同じようなスキンケアをしているという方も見受けられますが、気温や湿度、紫外線の強さなどにより肌環境は大きく変化します。通年同じスキンケアをするよりも、季節や肌状態により使う化粧品や使用量を調整しましょう。秋冬の乾燥した肌をうるおいに満ちた状態でい続けるには、化粧水だけでなく乳液やクリームでの保湿が必要です。水分量が高くニキビができやすい20代でしたら乳液でも足りますが、40代以降の肌には、より油分の高いクリームでのケアが最適です。

また、「モイスチャライザー」に分類される乳液や保湿美容液は、水分をキープする作用を持つ保湿成分(ヒューメクタント)を含むため、肌のうるおいを補う働きがあります。化粧品を選ぶ際は、ヒアルロン酸、セラミド、加水分解コラーゲン、グリセリン、多糖類、アミノ酸などの成分が入っているものがおすすめです。使用する量は規定量よりやや多め、肌を触って手のひらにペタッと吸い付く程度の量が目安です。

3.スキンケアと併せてライフスタイルの見直しを

とはいえ根本からゆらぎにくい肌を作るためには、日々のスキンケアだけでは十分とは言えません。食事や睡眠、排泄、運動、ストレスコントロールなどの生活習慣を整えることも重要です。とくにこれから冬を迎えると、乾いた冷たい空気によって皮膚温は下がり、水分保持力も奪われやすくなります。寒暖差が激しくなり自律神経が乱れ、体調を崩しやすくなり、肌の免疫力も低下します。十分な栄養と睡眠をとり、適度な運動を取り入れて、代謝を促すことが美肌に繋がるのです。

とくに肌の保湿力を高めたいなら、細胞間脂質の材料となる油をしっかりとることが必要です。ただし質の悪い油は控え、良質な油の摂取を心がけてください。おすすめは、皮膚の健康維持を助けるオメガ3系脂肪酸を含む亜麻仁油や荏胡麻油、青魚などに含まれるDHAやEPAなどです。また、健康へのメリットが注目される中鎖脂肪酸であるMCTオイルを、一日スプーン1杯程度とることを習慣にすると良いでしょう。