【皮膚科医が注意喚起】「TikTok」で話題のビールを塗って日焼けする「beer tan」

【皮膚科医が注意喚起】「TikTok」で話題のビールを塗って日焼けする「beer tan」

    目次
  1. 1. 「TikTok」で話題の「beer tan」とは?
  2. 2. ビールを塗って日焼けする「beer tan」の危険性
  3. 3. 日焼けと同時にビールを飲むのは最悪の組み合わせ
  4. 4. どうしても日焼けしたいときは?

1.「TikTok」で話題の「beer tan」とは?

若い世代を中心に人気を集める「TikTok」では、日々新たなトレンドが生まれています。中でも最近話題となっている「beer tan」をご存じでしょうか。主に海外で拡散されている「beer tan」とは、その名の通り、ビールを体に塗って日焼けをするという行為です。

投稿者たちいわく、「ビールに含まれるホップが肌に色素沈着をもたらすメラニンを活性化させ、キレイな小麦色に日焼けできる」そうです。TikTok上では「とても簡単で安上がり」「ビールも味わえて、最高の方法だね」との反応が寄せられるほど、一部では盛り上がりをみせています。

2. ビールを塗って日焼けする「beer tan」の危険性

では本当に、ビールを塗ると日焼け効果が増すのでしょうか?

答えは「No」です。「beer tan」をする人たちが考えているような、「ビールを塗るときれいに焼ける」ことはあり得ません。ビールを皮膚に塗るというのは目的外の行為ですので、日焼けを促進する効果も、日焼け止め効果があるという研究報告も見当たりません。

ですからビールを塗ってもキレイに日焼けするとは考えにくく、逆に日焼け止めを塗らずに日焼けしてしまうことによる健康被害の方が心配です。なぜなら過度に紫外線を浴びることは、早期老化や皮膚がんに繋がるからです。

実際米国がん協会は、「米国内で毎年診断される100万件以上の皮膚がんのほとんどが、太陽光への暴露が関与している」と報告しています。紫外線による皮膚トラブルが世界的に認知され、WHOはじめ世界中の皮膚科医が、日焼けマシンや太陽光に含まれるUV暴露による発がんなどの皮膚障害に関して、さまざまな方法で警鐘を鳴らしているのです。

日焼けローションの目的は、危険な日焼けを避け、少しずつ肌を黒くすることですから、現在販売中の日焼けローションのほとんどに少量の日焼け止め成分が含まれているはずです。商品によって配合量や成分は異なりますが、紫外線を吸収して放出して皮膚に届かないようにする「紫外線吸収剤」と紫外線を反射させて皮膚に届くのを防ぐ「紫外線散乱剤」の基本的な日焼け止め成分に加えて、紫外線によるダメージをケアしてくれる保湿成分なども配合されていることが多いようです。

一方ビールは、紫外線吸収剤も紫外線散乱剤も含まないためダイレクトに紫外線が皮膚に到達してしまい、肌老化や発がんのリスクが高くなります。ビールの臭いに引き寄せられて虫が寄ってくる可能性もあるでしょう。また、揮発したアルコールを小児が吸入してしまう危険性も無視できません。即刻やめて頂きたい危険な行為です。

3. 日焼けと同時にビールを飲むのは最悪の組み合わせ

「beer tan」の投稿では、ビールを肌に塗るだけでなく、太陽光を浴びながらごくごくと飲んでいる人も見かけますが、これはさらに肌ダメージを悪化させる行為です。なぜなら、ビールに含まれる糖分とアルコールの作用で、体内の糖化を促進させることが分かっているからです。糖化は老化の一大原因でもありますし、紫外線や喫煙などの酸化ストレスが生じているときには、糖化によって酸化が加速することが分かっています。飲酒をすると日焼けしやすくなるとも言われているため、飲酒と日焼けは最悪の組み合わせなのです。

4. どうしても日焼けしたいときは?

日焼けそのものをしないに越したことはないものの、「夏はきれいに焼きたい」と考える人もいることでしょう。では肌に負担をかけずに日焼けをしたい場合、どのようなことに注意が必要なのでしょうか。

やはりまずは日焼け止めを塗ることです。そのうえで、日陰で過ごしながら少しずつ太陽光を浴びるなら、紫外線による皮膚の急性障害(サンバーン)のリスクを少なくすることができます。

米国がん協会は、「どうしても肌を小麦色に、かっこよく焼きたい」という人に対し、SPF30の日焼け止めを塗る、頻繁に体位を変える、日光に当たる時間を制限する、日中の最も紫外線が強い時間帯を避ける、ということを推奨しています。SPF30程度の日焼け止めを塗れば、木陰やビーチパラソルの下で短時間過ごすだけでも十分にキレイなブロンズ肌になれるのです。

ですがもちろん、弱い紫外線でも長時間浴び続ければ光老化は進行します。特にメラニン活性の低い白色人種や、日本人でも日に当たるとすぐに赤くなる人は要注意です。そのような人は発がんリスク、シミやシワなどの老化リスクが高いので、浴びないに越したことはないでしょう。

暑い時期になると、キャンプやゴルフ、ビーチなどアウトドアを楽しんだときに「うっかり焼けてしまった」という人も多いですよね。残念ながらどのような美白化粧品を使っても、紫外線ダメージをなかったことにはできません。屋外にいるときはとくに、うっかり焼かないための十分な準備が必要です。

紫外線は寒い冬や雨の日でも降り注いでいます。太陽の光を強く感じなくても、晴天の日を100%とすると曇りの日は約60%、雨の日でも約30%の紫外線量があると言われています。日焼け止めを塗る、日傘やUV手袋をするなど、紫外線対策を徹底しましょう。

最近では日焼け止め成分に加えて、シミやシワケアに特化した美容成分が含まれる、スキンケア効果の高い日焼け止めも発売されています。ベタつくイメージのある日焼け止めですが、サラリとしたテクスチャーのものも増えてきました。

自分に合った日焼け止めを選び、数年後、十数年後に後悔しないために日頃から日焼け対策を意識していきたいですね。