【2023年花粉皮膚炎】花粉の時期に繰り返し皮膚炎を起こしている方へ~症状や対処法を皮膚科専門医が解説!

【2023年花粉皮膚炎】花粉の時期に繰り返し皮膚炎を起こしている方へ~症状や対処法を皮膚科専門医が解説!

まもなく花粉シーズンが到来します。2023年の花粉飛散量は、九州~東北で前シーズンより多く、とくに四国・近畿・東海・関東甲信で非常に多いと予測されています。いまや日本人の約2人に1人は花粉症だと言われるほどの国民病です。この季節になると気持ちまで滅入ってしまいますよね。花粉症というと、目や鼻に症状が出るのが一般的ですが、近年は、花粉が原因で顔や首などに湿疹やかゆみ、赤みといった肌トラブルを引き起こす人が増えています。

    目次
  1. 1. 花粉による症状は目や鼻だけではない!「花粉皮膚炎」とは?
  2. 2. 「花粉皮膚炎」の発症メカニズム
  3. 3. 自宅での「花粉皮膚炎」の予防策
  4. 4. 美容クリニックでの「花粉皮膚炎」予防策と治療法

1. 花粉による症状は目や鼻だけではない!「花粉皮膚炎」とは?

花粉によるアレルギー反応で、皮膚に炎症が起こる症状を「花粉皮膚炎」と呼んでいます。花粉が飛散する時期にのみ、目周りや顔など露出が多い部位や衣服やアクセサリーが擦れやすい首に症状が現れるのが特徴です。また、元々花粉症で、何度も鼻をかんだり、目を擦ったりすることでも生じやすくなります。

主な症状は、乾燥してムズムズ、チリチリした刺激を感じたり、メイクのりが悪くなったりするなどの軽いものから、ひどいかゆみや周りの皮膚との境界がはっきりした赤み、まぶたに蕁麻疹のような浮腫みを伴う発疹が出る人もいます。そして、目、鼻、喉のいわゆる花粉症の症状が出なくても、花粉皮膚炎だけを起こしている例もあります。

季節の変わり目に起きる「肌荒れ」と思い放置している人も少なくありませんが、花粉が飛散する時期に、頻繁に皮膚炎を起こしている場合は、花粉皮膚炎を疑いましょう。それではなぜ、花粉皮膚炎は起こるのでしょうか。

2. 「花粉皮膚炎」の発症メカニズム

私たちの皮膚の一番外側にある角層には、バリア機能が備わっています。わずか0.02㎜の厚さのなかで、角質細胞がブロックのように10~20層積み重なり、肌バリアの最前線として外部から異物(花粉などのアレルゲンや細菌など)の侵入を防ぎ、同時に肌の水分を内側に留める役割を担っています。

しかし、花粉が飛散する春先は、冬の間に蓄積された乾燥ダメージや強くなり始めた紫外線などの影響により、バリア機能が低下しやすくなっています。すると、肌表面に隙間ができて、そこから花粉(抗原)が侵入してしまうのです。

体内に入ってきた花粉は、人が持つ免疫システムにより異物であり敵とみなされると、それに対抗するための「抗体」が作り出されます。この抗体は、花粉に接触する度に作られるので体内で抗体の設計図のようなものがメモリー(記憶)されていきます。それが一定水準に達すると、経皮感作が成立(アレルギーの発症準備が完了した状態)します。そして、次に花粉が入ってきた時にアレルギー反応を引き起こすヒスタミンが分泌され、アレルギー症状が現れるのです。

一度感作が成立すると、同じ抗原に対しては毎回同じような反応が生じます。花粉皮膚炎は2~4月に飛散するスギによる症状が有名ですが、その他の花粉でも生じる可能性はあります。また、花粉皮膚炎は、バリア機能が低下した皮膚で起こりやすいため、元々アトピー性皮膚炎の素因がある人や乾燥肌の人は発症しやすい傾向にあります。

3. 自宅でできる「花粉皮膚炎」の予防策

■ 花粉に直接触れない

花粉を肌や髪の毛にできるだけ付着させないことが一番の予防策です。外出時はメガネ、マスク、帽子、スカーフなどを着用すると良いでしょう。春のアウターは、スプリングコートやブルゾンなど、表面がツルツルした素材のものだと花粉が付着しづらいのでおすすめです。また、髪は、静電気がたまりやすく花粉が付着しやすい場所なので、ロングヘアの人は、外出時にはなるべくコンパクトにまとめましょう。

そして、家に帰ったらまず、玄関先で服をブラッシングする、アウターは玄関に吊るす、クローゼットにしまうなら必ず扉を閉めるなどで、家の中に入れない工夫をしましょう。そして女性の場合、早めにメイクを落とすことも重要です。さらに直接肌に触れるシーツや下着、洋服などは室内で干す、空気清浄機、布団乾燥機を活用するのもおすすめです。

■ 保湿で肌のバリア機能を高める

肌のバリア機能を高めるには、なんといっても保湿が大切です。肌内部の水分を保持する働きのあるヒアルロン酸、セラミド、グリセリン、アミノ酸といった保湿成分を含むモイスチャライザー(クリーム)使ったお手入れは、確かな保湿効果をもたらすのでおすすめです。効果を得るには、直後に肌がべたべたするくらいの量をしっかりと塗ることです。そして、これは花粉が飛散される前からしっかり行うことで効果が発揮されやすくなります。

もし、肌が敏感になっていてクリームもしみる場合は、保護膜を形成することが大事です。ワセリンなどバーム系やオイル系のものを選んで、刺激が中に入るのを防いでください。重いテクスチャーの保湿剤を顔全体に塗るのは違和感があると思いますが、セカンドスキンを作って肌を守るイメージです。余計な成分を含まないシンプル処方のものを選びましょう。

■ 生活習慣を整える

生活習慣を整えて体の内側から肌を立て直すことも大切です。バリア機能の高い健康的で美しい肌のために欠かせないインナーケアの5本柱は「バランスの良い食事」「良質な睡眠」「腸内環境の向上」「運動習慣」「ストレスコントロール」です。これらのうちの2〜3本が崩れると肌はゆらいでしまいます。

4. 美容クリニックでの「花粉皮膚炎」予防策と治療法

セルフケアで改善しない時は、すみやかに皮膚科を受診してください。炎症が強い場合は、ステロイドの外用薬などを使って炎症を抑えていきます。また、ひどくなる前に抗ヒスタミン剤を内服し、花粉症そのものに対して治療するのも有効です。また、花粉症や花粉皮膚炎の治療として、当院では『点鼻ボトックス』や『プラズマシャワー』をご案内しています。

■『点鼻ボトックス』

抗アレルギー薬の点鼻・点眼・内服など標準治療をしていても、効果が不十分な方は、『点鼻ボトックス』の併用がおすすめです。しわ治療などに使われている「ボトックス」を、注射ではなく、目薬のように鼻腔に垂らすだけの治療法です。

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花粉が鼻粘膜に付着すると肥満細胞表面のIgE抗体に結合(抗原抗体反応)し、ヒスタミンが遊離されます。ヒスタミンは鼻粘膜の神経(副交感神経)を刺激して神経終末から神経伝達物質「アセチルコリン」が遊離され鼻腺(鼻汁の分泌腺)に作用して鼻汁が出るのですが、ボトックスはこのアセチルコリンの遊離を抑制します。

そのため、施術の当日~翌日には花粉症の不快な症状(鼻水・鼻づまり)を抑えることができます。また、目の痒みも少し軽減させる効果があります。痛みもなく、通常の抗アレルギー薬にみられるような眠気やだるさなどの心配もありません。1回の点鼻で、約2~4週間程度効果が持続します。

■『プラズマシャワー』

花粉皮膚炎を防ぐには、バリア機能を高めることが大切です。乾燥や肌荒れなどの症状に悩む人に試して欲しいのが『プラズマシャワー』です。強力な滅菌力で肌トラブルを引き起こす細菌を死滅させ、肌荒れを改善する治療です。

同時に抗炎症と肌再生作用が高い「サイトプロMD」を浸透させることで、傷ついた肌の炎症を抑え、赤みを改善し、キメの整った健康的な肌へ導きます。痛みやダウンタイムがないノンストレスの施術なので、当院でも年齢を問わず人気があります。

今年も、花粉症の本格シーズンが到来します。新年度を迎えるためにストレスが多く、空気が乾燥し、紫外線が増え始め、花粉などの微粒子が多く飛散する春先は、1年で最も肌が不安定になりやすい季節です。しっかりとした対策を行いましょう。