溶けないフィラー・非吸収性注入製剤(他院の修正)の効果と特徴

溶けないフィラー・非吸収性注入剤の危険性

「非吸収性製剤」の注入による副作用問題は10数年以上前から常々取り沙汰されてきました。分解されずに体内に長期的に残ってしまう製剤は、生体に異物認定されやすく、注入後数カ月~数年経ってしこりや石灰化、異物反応、免疫異常、二次感染などが起こるリスクがあります。また、半永久的ではありませんが、長期間持続する「レディエッセ」などの製剤も体質によっては異物肉芽腫や石灰化の報告があります。これらの注入剤には「ヒアルロン酸注入」のように溶解酵素が存在しないので、万が一、血管内に注入されて塞栓を生じたり、細い動脈を圧排して血流障害が生じたりした場合、解決の手段がないので重大な事故につながる可能性があります。また、凸凹したり、遅延型の異物反応が生じたりしても吸収されるまで待つか、切開手術しか方法がありません。

そして、切開手術で簡単に解決できるかというと、非吸収製剤が組織の中に広く入り込み、皮膚や皮下組織、血管、神経などを大きく巻き込んで存在するので、完全に取り除くためには広範囲に組織を失うことになり、切開線だけでなく、凹みや陥没、萎縮、感覚異常、麻痺、表情の変化など、回復不能の後遺障害が残る可能性もあります。当院は99%の方が満足されるものでも、1%の方に回復不可能な後遺症が生じるリスクがある製剤や施術は行わない方針です。


溶けないフィラー・非吸収性注入製剤(他院修正)のトラブル例

非吸収性フィラー製剤

日本美容外科学会(JSAPS)が策定する美容医療診療指針において、顔のシワ治療に対する非吸収性フィラー製剤の使用は、晩期合併症の危険性があり、除去が困難であり、長期経過での安全性が確立していないため【推奨度1(行わないことを強く推奨する)】とされています。


エンドプラスト(エンドプロテーゼ)
主に鼻筋・あご・バストなどに注入されるジェル状のシリコン粒子製剤です。カニューラ針で注入し、しばらくすると寒天様に固まり、周囲に被膜が形成されます。ヒアルロン酸注入のように簡単に行え、半永久的に残存することから、手術でシリコンプロテーゼを入れることに抵抗がある場合などに選択されることがあります。ぶよぶよと柔らかい素材なので、鼻筋が太くなり見た目が不自然になるため、仕上がりが気に入らない場合が多いようです。「被膜ができるので100%取り除ける」という触れ込みですが、実際は、効果・仕上がりが満足しない場合、アレルギー反応が生じた場合など、取り除くためには切開手術が必要です。手術費用も数十万円から200万円程度と高額で、多くの場合傷が残りますので、気楽に注入できるものではありません。


アクアミド(アクアジェル)
アクアミドは97.5%の純水と、2.5%のポリアクリルアマイド(アクリルアミドが重合した物質)ものからなる非吸収性の注入剤です。近年、"アクリルアミド"が発がん性物質であることが指摘されており、アクアミドが人体に無害な硬質のゲルであるとの触れ込みは疑問視されています。


アルカミド(バイオアルカミド)
ジェル状のシリコン粒子製剤です。96%が無発熱性の水、4%が架橋された「アミドイミドアルキル型高分子均一ポリマー体」という、特殊なソフトコンタクトレンズの原料と類似の成分で構成された物質です。アルカミドは、アクアミドとは違い、硬度が硬く、注入されると周囲に速やかにコラーゲンの被膜が形成されるため形成効果が安定しているといわれています。2018年9月、ほうれい線に繰り返しアルカミドの注入治療を受け、傷痕、痛み、開口障害など重篤な副作用を生じた大阪在住の女性が、施術した美容外科を提訴しました。原告の女性は、危険性をあらかじめ知らされていたら、この施術は受けなかったと悲しみを訴えました。


2~3年で分解吸収されるが溶解剤が存在しない製剤


レディエッセ(カルシウムハイドロキシアパタイト)
レディエッセは、歯や骨を形成する成分「カルシウムハイドロキシアパタイト」を主成分とした注入剤の一種で、鼻筋を通す、顎を形成する、額を高く形作るのに用いられます。注入すると、周囲から線維芽細胞が入り込み、骨様の組織を形成するため持続期間が長い点、鼻筋などを細く作りやすい点、比較的仕入れ原価が安い注入剤である点が好まれ、多くのクリニックで使用されています。しかし、レディエッセはヒアルロン酸に比べ硬く白色の物質であるため、目の下や法令線などの柔らかい部位に注入すると、硬いしこりになって凸凹したり、白く透けたりしてしまうことがあります。体質によっては異物肉芽腫や石灰化の報告もありますが、溶解剤がないので除去手術を受ける方が一定数存在します。また、レディエッセ注入後の血管塞栓による皮膚壊死、視力低下・失明などの報告もあります。さらにレディエッセはヒアルロン酸に比べ感染に弱いとも言われています。


エランセ(PCL・ポリカプロラクトン)・ポリ乳酸フィラー(PLLAやPDLLA)
エランセは、PCL(ポリカプロラクトン)を主成分とする注入剤です。溶ける糸の成分が1〜2年以上かけて分解吸収されます。最終的には溶けるので安心と勘違いしている方が多いのですが、異物反応が出ても、凸凹して仕上りが気に入らなくても、溶解剤がなく溶かせないので修整が困難です。特に目の下に浅く注入されてしまうと、表情によってナメクジのように浮き上がるという事例が目立ちます。
ポリ乳酸系のフィラーも時間をかけて吸収されるものですが、注入手技によっては、しこりや凸凹などのトラブルが生じる場合があります。


脂肪注入

大腿、腹部、臀部などの自己脂肪を採取して、ボリュームを失った組織の充填に用いる注入法です。高い技術を要するため、未熟な施術では、凸凹やしこり、石灰化、顔貌変化などのトラブルを生じる場合もあります。移植された脂肪は、正常脂肪と異なり、脂肪溶解注射への反応が悪く、しこりの治療には難渋する場合があります。


グロスファクター(成長因子)注入各種


グロスファクターそのものを注入する施術
(名称例:グロスファクター注入・グロスファクター注射・FGF注入・FGF注入療法)
グロスファクター(成長因子)は、ダーマペン4・シルファームX(マイクロニードルRF)・フラクショナルレーザー照射後の小さな傷からごく少量を浸透させた場合は、ダメージの回復を早め、肌の再生にゆっくりと作用するので問題になりません。しかしながら、成長因子そのものを注射した場合、組織の線維成分再生が暴走し、いつまでも増殖し続けてしまうことがあります。なぜなら、成長因子は、生体内に注射されると完璧にコントロールすることはできないからです。その結果、注入後2週間~数年経って脂肪組織の線維化、不自然なふくらみやしこりが高頻度で生じます。自覚症状としては、ツッパリ感、違和感、灼熱感、圧痛です。中から疼くような、刺すような痛み(自発痛)を覚える方も多いです。

さらに、グロスファクター系注射後のトラブル治療は、難しいだけでなく、一度改善したように見えてもちょっとしたきっかけで再び腫れあがるので厄介です。誘因は風邪などの感染症、飲酒、疲れ、入浴などが多いですが、原因不明がほとんどです。また、ほとんどすべての医療機器照射治療、他の製剤の注入治療はコラーゲンの過形成を助長させ腫れや痛みを引き起こすので、約1~3年、場合によっては5年以上出来なくなってしまいます。


グロスファクターが添加されている施術
(名称例:成長因子添加PRP注入・セルリバイブジータ・成長因子添加自己培養真皮線維芽細胞療法)
自分の血液から精製した濃厚血小板血漿を注入して肌の再生を促すPRP注入療法(多血小板血漿注入)は当院でも採用している再生医療の一種です。ただし、このPRPにグロスファクター(成長因子)を添加する注入療法は総じて危険です。○○〇PRPなど、クリニックによって施術名は様々で、肌再生注射など成分を想像しがたい名称を付けられている場合もあります。

グロスファクターには様々な種類がありますが、線維芽細胞増殖因子(bFGF : basic fibroblast growth factors)を主成分とした「フィブラストスプレー®」という製剤があります。元々糖尿病性潰瘍や壊疽、寝たきりの方の床ずれなど、栄養障害・循環障害を基礎疾患に持つ重症な皮膚潰瘍の治りを早める目的で使用される製剤です。何か月もの間、骨が見えるほど深い穴があいていた状態から、肉芽がモリモリ盛り上がってくる速さとその効果には驚異的なものがあります。一部のクリニックで、そのフィブラストスプレー®(bFGF製剤)を、PRPに混ぜて注入する方法がとられています。 「そのように強すぎる武器(製剤)を、健康な方の皮膚に注射したらどうなってしまうのか?」専門家でなくても想像できるのではないでしょうか。

bFGFがPRPの創傷治癒作用を必要以上に高めて線維芽細胞が異常増殖し、過剰に膨らんで顔が大きく変形したり、肉芽やしこりを形成します。そもそもフィブラストスプレーは、傷に噴射する薬剤であり、皮下への注入は認められていません。このような様々な危険性から日本美容外科学会(JSAPS)が策定する美容医療診療指針では、PRPにbFGFを添加しての使用は【推奨度2(行わないことを弱く推奨する)】とされています。当院では開院以来、成長因子などの添加物を混合して施術したことは一切ありません。

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