雑誌『Richesse』2022年SPRING No.39(2022年3月28日)

特集「正しく潤ってこそ、強く美しい。大人は春夏秋冬、保湿」(P197~201)に慶田院長の監修記事が掲載されました。

美しい肌とはダメージに強い健康的な肌。その土台は潤っていることにあります。しかし何十年もスキンケアしながらも、正しく保湿ができているか、疑問に感じている人が多く、実際、大きな勘違いケアを続けているひともいるのが現実です。とりわけ高温多湿になるこれからの季節のスキンケアには、肌の乾燥を進行させ、老化に導くトラップがたくさんあります。当たり前に行っている保湿ケアを医学的見地から検証。季節・年齢を問わず、強く美しい肌を目指していきましょう。

【顔&ボディの肌、保湿の真実】
保湿について勘違い払拭し、真に潤った肌を手に入れるべく、正しい美容の知識を発信する皮膚科専門医の先生3人が、医学的見地から解説しています。

●よくある勘違い。保湿と保水は違います。
保湿とは肌の水分を補い、水分の蒸発を防いで潤いを保つことです。実は、保湿剤には二種類あります。一つはエモリエント(油分の膜で肌を覆い水分の蒸発を防ぐもの)、もう一つはモイスチャライザー(セラミドやグリセリンなどの潤いを保つ効果のある成分や、角層のなかで潤いを作り作り出すように働きかける成分を含むもの)です。保湿とは、2つの働きのある成分が混ざった乳液かクリームを塗ることですが、皮膚科医が推奨する真の保湿は、モイスチャライザーを塗ることです。
化粧水を保湿と思っている人が多いのですが、化粧水の役割は水分を与える保水。後に重ねるものの肌馴染みを良くするなどのメリットがありますが、保湿という観点からはマストではありません。またオイルの働きはエモリエントのみです。オイルだけで保湿はできません。オイルのみで潤っているとしたら、皮膚本来のバリア機能が非常に強固な人です。

●乾燥は軽度のバリア障害
保湿が重要なのは外界から体内を守るバリア機能を発揮する最前線、角層を健やかに保つためです。バリアの3要素は皮脂腺から出る皮脂と分解物のグリセリンと汗の水分が混ざってできる『皮脂膜』、水分を層状に挟みながら角層を接着するセラミドなどの『細胞間脂質』、角質細胞内で水分を抱え込むアミノ酸や尿素などの『天然保湿因子(NMF)』です。特に細胞間脂質は水分保持機能の8割を担う最重要物質です。セラミドやNMFは角層のターンオーバーが滞ると合成されにくくなり減ってしまいます。年を取ると乾燥しやすいのは、代謝が落ちターンオーバーが滞るのが大きな要因です。アトピーの素因がある人はセラミド合成が遺伝子的に少ないバリア障害ですが、敏感肌の自覚がない人も乾燥が気になる時点で軽度のバリア障害がおきています。乾燥を放置しているのは、穴の開いたボロボロの傘で雨の中を歩くような、危険な状態なのです。

●常在菌に着目して潤う肌に
数年前から保湿に関わる一つのキーワードとなっているのが肌フローラなどとも呼ばれる皮膚常在菌叢です。肌フローラのなかで、美肌菌と呼ばれるのが、表皮ブドウ球菌やサーモフィラス菌などです。これらは、肌の上で、皮脂腺から分泌された皮脂が脂肪酸とグリセリンに分解されることに関わっています。グリセリンは保湿作用のあるモイスチャライザーの1種。肌の上で水分や分解されなかった皮質などと混ざることで、肌の潤いに大切な天然クリームとなるのです。しかし肌フローラは誤ったスキンケアを行うと育ちにくくなります。肌フローラのバランスが悪いと目には見えない炎症『微小炎症』が起き、炎症が繰り返させると皮膚老化が進みます。老化予防の観点からも正しいスキンケアを行い、また肌フローラが育ちやすい環境に整える製品を活用するのもよいでしょう。

●春も夏も、一年中、乾く要因だらけ
春はバリア機能が特に低くなりやすい季節です。冬の乾燥で既にバリア機能が低下しているところに花粉や黄砂などが飛んでくるのが要因の一つです。
また生活環境や人間関係が変わる人が多く、そのストレスで睡眠の質が低下したり、季節変化による自律神経が不安定になることも要因としてあげられます。
何をしても肌が荒れるならいつもよりシンプルケアにしてみて下さい。夏は湿度が高く、角層に水を抱える力がなくても乾燥があまり気になりません。でもエアコンの風や汗で皮脂が流れやすい、ケアを化粧水だけですませがちなど乾燥を促す要因は多数あります。就寝中もエアコンで乾燥するので、寝る前にクリームでしっかり保湿を心がけてください。

【誤解の多いスキンケアと決別を。顔の保湿ケア、正解・不正解】
間違ったスキンケアに鋭く切り込む美容法の解説が評判の慶田院長が、大人の女性が知っておくべき保湿ケアの正解・不正解をわかりやすく解説しています。

1. クレンジングは1分以内で潤いのもとを逃がさない
界面活性剤が入ったクレンジング料は大切な保湿因子も溶かし出す可能性があります。マッサージしながらなど、長時間肌にのせていると保湿因子は奪われ、乾燥を招くことになります。顔にのせ、肌になじませてからすすぐまで1分以内を目安に行ってください。

2. 不器用や人のクレンジングはオイルタイプを
クレンジングは短時間に、とはいってもメイクが毛穴に残っていてはいけません。クレンジング料のタイプは毛穴落ちメイクまで落とせればミルク、クリーム、オイル、ジェル、いずれでもよいですが、短時間にメイクを乳化させて落としやいすいのはオイルです。クレンジング料の良し悪しは拡大鏡で毛穴を確認すれば分かります。オイルクレンジングは乾燥肌にNGというのは迷信です。実際、アトピー性皮膚炎患者で行った臨床試験で、敏感肌用のオイルクレンジングを使用することで角層の水分量が上がり、TEWLが低下し、バリア機能が改善したという論文もあります。

3. 肌を長時間ぬらさない、ゴシゴシ洗わない
肌の摩擦厳禁は常識ですが、特にぬれた肌は潤いが流出しバリア機能が低下する傾向があります。洗顔・クレンジングは短時間かつ、そっとなでるように優しく行いましょう。

4. 拭き取り化粧水に注意。薄茶色の正体は
コットンに拭き取り化粧水を含ませて拭き取ると、コットンが薄茶色になります。汚れだと思って何度もこする人がいますが、この茶色は汚れではなく角層の中に含まれるメラニンの色です。メラニン活性の高い日本人はメラニンが濃く出ます。汚れではないため、何度もゴシゴシ拭き取るのは肌によくないのでやめましょう。

5. たまに『ケミカルピーリング』が効果的
拭き取り化粧水を使うとついやりすぎてしまう、そういう人はクリニックでケミカルピーリングピーリングを行い、ターンオーバーを促すという選択をお薦めします。

6. 何度も何度も化粧水を重ねるのはナンセンス
美容に熱心で、洗顔後に化粧水を「もう肌に入らなくなるまで何度も重ね付けしています」と言う人がいますが、これは意味がありません。角層の厚みは食品用ラップ1枚程度です。そんなに大量に化粧水が入るわけがなく、もし入ったら顔は膨らんでしまいます。そもそもバリア機能があって奥まで入らないようにできています。1回なじませて、もう一回、それぐらいで十分です。

7. コットン100回パッティングは傷のもと
化粧水をコットンで何十回もパッティングすると肌の奥までしっかり、毛穴も引き締まるという説があります。コットンはどんなに良質なものでも細かい繊維があり、パッティングすると物理的刺激となり、さらに肌が濡れた時間が続くため、肌が敏感に傾きます。化粧水は両手にとり、優しく押し込むようになじませてください。

8. 毛穴詰まりには毛穴パックではなく酵素洗顔
剥がすタイプの毛穴パックは、剥がした後すぐにまた角栓ができてしまい、さらに無理やり剝がされた角層が、保湿因子の不足した質の悪い各汁細胞を作り出してしまいます。パウダータイプの酵素洗顔で肌に負担をかけずに落としてください。

9. スクラブ洗顔を繰り返すと乾燥肌を招く
肌のゴワツキや毛穴詰まりの改善にとスクラブ洗顔を繰り返し使うと細かな傷がつきます。普通肌やオイリー肌の人で週1回まで、敏感肌の人は避けたいアイテムです。

10.クリームを塗る目安はティッシュがはりつくぐらい
保湿ケアの本番は、乳液とクリームです。塗りすぎて角層を湿らしすぎても、量が足りずに乾燥しても、バリア障害につながります。塗った後、ティッシュをはりつけ、落ちない程度を目安に塗布しましょう。何アイテムも重ねる人は薄くても、重ねるとちょうどよくなります。1アイテムしか使用しない人は、ペタペタを感じるくらいに塗りましょう。

11.自分に合った保湿力の製品かは翌朝わかる
角層の水分を蓄える力は人それぞれです。他人がよかったという製品の保湿力が自分に合うとは限りません。夜にクリームを塗ってひと晩寝た翌朝、もう乾燥を感じたら、それは自分には保湿力が足りない印、翌朝の肌状態で見極めましょう。ただ寝室の湿度など環境にも左右されるため、湿度を高めるなどの調節も大切です。

12.日中は、ベースメイクの上からでも保湿を
日中もこまめに保湿します。汗など邪魔なものが表面にないなら、ファンデーションの上からそのままでよいので、メイク崩れしにくい乳液などで小まめに保湿します。ただし、汗などをかいていたら、肌が弱い人にとっては、汗の中のミネラル分が肌への刺激になります。ぬらしたガーゼで吸い取ってから保湿をしましょう。

13.ミストやスチーマーに保湿はあまり期待しない
製品にもよりますがミストは基本的にほぼ水です。つけた瞬間は心地よいですが保湿ではありません。潤ったと思っても一日に何度もスプレーするようなら潤っていない証拠です。同じ理由でスチーマーもほぼ水です。一瞬は潤って柔らかくなるのでクレンジング時の使用などにお薦めですが、すぐに蒸発するため使用後はしっかり保湿をしてください。

14.肌が敏感に傾いているときはシンプルな処方で
保湿はリッチなものがいいと思いがちですが、こだわりの成分が刺激となり乾燥が進む場合もあります。敏感ぎみのときは処方がシンプルな敏感肌用ラインを試してみて下さい。

15.バリア機能を整える観点でUVケアもセットに
スキンケアの3要素は洗う、潤す、光対策です。UVケア=保湿ではありませんが、日焼けすると乾燥するのは事実です。乾燥しにくい肌を作るためにもUVケアは必須です。

16.乾燥しやすい目元や唇は専用ケアか二度塗り
皮膚が最も薄く皮脂腺のない目元はバリア層も極薄です。アイクリームか全顔用のクリームの重ね塗りで保湿をしてください。唇は自ら潤う力がなく、潤いを感じでもそれは唾液の水分です。ただし粘膜以降部の為普通のクリームは難しく、専用のリップケアをしましょう。

17.シートマスクやパックには乾燥のリスクが
大容量のシートマスクは個包装タイムより強い防腐剤が使用されており、バリア機能を壊す可能性があります。そもそもシートマスクの長時間使用は乾燥を招く一因になります。ここぞという日の朝に使うと、透明感がアップしてメイクのりもよくなるので効果的ですが、パックもバリア機能が強い人向きなので、敏感肌にはお薦めしません。

18.肌断食より、5本柱が大切
スキンケア製品を使わないで肌を休める肌断食は無意味です。それよりも、食事、睡眠、運動習慣、腸内環境、ストレスコントロールの5本を立て直すことが大事です。

是非ご参考になさってください。

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