学術誌『Bella Pelle』2016August号 Vol.1No.1(8月10日発売 掲載ページP63~66)

特集「有効成分の経口摂取による腸内環境改善と美肌効果」に慶田院長の監修記事が掲載されました。

機能性ヨーグルトのデュアル効果で、肌のバリア機能が改善!健康で美しい肌を保つためには、基礎化粧品などによるスキンケアが欠かせないが、最近、直接肌を手入れするだけでなく、「口内美容」「美肌サプリ」など、有効成分を経口摂取する、いわば「体の中からの美肌効果」が注目されています。

近年増えていると言われる乾燥肌トラブルの現状と、ヨーグルトの経口摂取による美肌効果について慶田院長インタビュー形式で掲載しています。


【乾燥肌トラブルと栄養の関係】

Q、最近季節に関係なく、肌が乾燥している患者さん多いと聞いていますが、慶田院長の印象はいかがでしょうか?

確かに乾燥肌のトラブルを感じている人が増えています。原因の1つとして「環境」の問題が挙げられます。都市部のオフィスなどは、かなり乾燥しますので、「乾燥肌=冬の疾患」という概念はもはや古く、現代は梅雨でも夏でもエアコンによる除湿で肌が乾燥しやすい環境だと言えます。

また、夏季は当然のことながら汗をかきます。その状態のまま、エアコンで冷えて除湿された室内に入ると、一気に水分が蒸発して角層から水分が奪われ過乾燥になります。汗をかいて肌がしっとりしているようにみえる状態は「打ち水」と同じです。一時的に湿りますが、本当に保湿できているわけではありません。

保湿とは、「角質の細胞と細胞のあいだにしっかり水分を抱え込むこと」です。角層のバリア機能が低下しているうえに、汗をかいてそのままにしていると、すぐに乾燥してしまいます。

残念ながら、現代のオフィス環境は乾燥肌になりやすい環境だと言わざるを得ません。働く女性が増え、忙しい生活を送っている方も非常に多く、食生活の乱れと睡眠の質の低下による肌トラブルが増えています。こうした「ライフスタイルの変化」も乾燥肌の方が増えている原因と考えられます。

他にも、ダイエットをした結果、栄養失調になる若者も多いようです。若いときは体力でカバーされるため、食の優先順位が低くなりがちですが、「十分な栄養を摂取して、はじめて肌や髪、爪にも栄養が行きわたるのですよ」と、患者さんにはお話しています。

Q、栄養の偏りが肌に悪影響を及ぼすということは、栄養の摂り方で肌トラブルを改善できるのでしょうか?

患者さんと接していると、全身の隅々までバランスよく栄養が行きわたっているかどうかが、肌の状態に現れることを実感します。

たとえば、ニキビに対してケミカルピーリングを施術しても、治療効果が現れにくい人がいます。生活習慣がきちんとしている患者さんは、2週間に1度の治療を3~4回行うと、ぐんぐん良くなりますが、ファストフードしか食べない、野菜を食べる習慣がない患者さんは、すぐ振り出しに戻ってしまいがちです。いくらエビデンスがある施術を行っても、良い結果が出るか出ないかは、食事を含めた基本的な生活習慣次第と言えるかもしれません。

これまでは、乾燥肌の治療といえば外用剤中心の「塗る治療」が主流でした。基本となる外用療法に加え、正しい洗浄、入浴方法などのスキンケア指導に時間をかけてきましたが、限界を感じることもあります。

ですから、ここ数年は外側からの「スキンケア」と体の内側からの「インナーケア」をセットととらえています。両側面からのケアがあって良い肌の改善につながるという考え方です。基本的な生活習慣は、食事・睡眠・排泄・運動週間・ストレスコントロールの5本が柱ですが、食事と排泄は腸内環境という点でかかわっていますし、最近では「腸内環境と皮膚」、「腸内環境とメンタル」などの関係も徐々にわかってきて、大変興味深く感じています。

Q、乾燥肌トラブルに対して、患者さんにはどのような指導をされていますか?最近、何か新たな変化はありますか?

肌を乾燥させないためには「皮脂」が大事だと思い込んでいる患者さんが多いですが、皮脂が水分保持に寄与している割合は、約2〜3%に過ぎず、80%は角質細胞間脂質、残りの約18%は天然保湿因子です。これらはいずれも細胞が角化する過程で生じるものですから、結局、皮膚のターンオーバーを正常化することが一番大切です。このターンオーバーの速度は、40歳頃から少しずつ遅くなることかわかっています。そして、乾燥状態の代償として、高齢者の皮膚は角層が少し厚くなるわけですね。また、ニキビ患者さんの角層セラミド量は低く、毛包漏斗部の異常角化を生じ、毛包が詰まることが報告がされていますので、やはり保湿がポイントと言えます。乾燥性の敏感肌をそのままにして軽微な炎症をくり返すと、肌の老化が早まる可能性があるので、保湿の重要性は繰り返し説明しています。

昨年はとくに機能性ヨーグルトを摂取することで肌の保湿機能が改善したという報告があり、「食べたもので肌が変わる」ことが実証されました。これまで肌に対する食事の影響については、経験的にしかアドバイスができなかったところに、この報告がエビデンスとして理論づけしてくれたことで、以前より患者さんに説明しやすくなりました。

【注目されるヨーグルトの保湿効果】

Q、ヨーグルトを食べることで皮膚の保湿機能が改善するというエビデンスについてご紹介ください。

川島眞先生(東京女子医科大学皮膚科教授)による臨床試験の結果です。「コラーゲンペプチド」と「ミルクセラミド」を含むヨーグルトを、乾燥肌で慢性的な便秘傾向の女性32人に4週間毎日食べてもらい、肌質に関しては、摂取4週間後の皮膚の状態(経表皮水分蒸散量{頬}、角層水分量)および被験者のアンケートによるQOL調査、また皮膚科専門医による所見によって評価したものです。

治療の結果、頬の経表皮水分蒸散量が減少し、角層水分量が増えていました。これはヨーグルトと「ミルクセラミド」を一緒に摂ったことによって保湿機能が改善し、バリア機能が強化されたことを示唆しルクセラミド」単独と比べて血中のセラミド量が約2倍になっていました。つまり、ヨーグルトを一緒に摂ることでセラミドの吸収量が約2倍に上がったことになります。皮膚所見でも乾燥肌やかゆみの改善を認めたそうです。排便の回数も、試験開始1週間から増えていました。「コラーゲンペプチド」と「ミルクセラミド」を含むヨーグルトが肌機能と腸内環境に多面的に作用したといえます。

さらに、皮膚の炎症の指標となる血清TARC値(thymus and activation-regulated cmemokine:Th2ケモカイン)も低下し、炎症抑制効果があることもわかりました。アトピー性皮膚炎にまでは至らない、軽症の乾燥肌の人でもTARC値はかなり上がっていますが、今回の治療では、TARC値が高い人ほど効果が大きいという結果が出ています。

この結果により、「コラーゲンペプチド」、「ミルクセラミド」を強化したヨーグルトで、皮膚のバリア機能、乾燥肌を改善することが結論づけられました。

Q、今回の試験に用いられたミルクセラミドとはどのようなものですか?

セラミドは皮膚の細胞と細胞をつないで潤いを守っている成分です。「ミルクセラミド」は、スフィンゴミエリンという牛乳由来のリン脂質で、普通のヨーグルトにはごく微量しか含まれていないものです。「ミルクセラミド」の分子そのものが、角質細胞間脂質として水分保持に寄与していると推測されます。現在さらに研究が進められていますが、皮膚のターンオーバーに良い作用があると考えらます。セラミドは、自分の力で合成するものですが、その合成力が落ちたとき、経口でセラミドを補うと、角化の過程が整うことで、健康な皮膚のターンオーバーのサイクルが復活し、また自分の力でセラミドを作り出せるようになります。

臨床試験では、ヨーグルトにこの「ミルクセラミド」を強化するとともに、「コラーゲンペプチド」も添加しています。これによって、コラーゲンを合成する酵素の活性が上がったということも注目すべき点です。


【美容成分も機能で選択する時代】

Q、ヨーグルトを活用する利点はどういったところでしょうか?


薬やサプリメント、体に良いとされる食品でも、アドヒアランス向上の条件は、手軽で高価すぎず、摂取しやすいかどうかだと思います。その点、ヨーグルトは小包装のものなら、食器を汚さず、普段の食事に加えたり、おやつにしたりできると思います。

スーパーなどで手軽に小運輸できることも大きな利点でしょう。経済的な負担も少なく、無理なく続けられますので、若い患者さんにも奨めやすいです。

今回の臨床実験で興味深い点は、有効成分である「ミルクセラミド」と「コラーゲンペプチド」を、単体で摂取してもらった場合とヨーグルトに混ぜて摂取した場合とで、吸収率が異なることです。血中濃度の上昇率が変わることで、ヨーグルトそのものに有効成分の吸収を改善する作用があることが改めて確認できました。ただし、食べるのをやめると、1週間で元に戻ってしまうこともわかっています。毎日続ける重要性も併せてお伝えすべきですね。


Q、ヨーグルトの肌に対する効用をお話ししたとき、患者さんからよく聞かれる質問などはありますか?


摂取量について質問されることがあるのですが、世界第二位のヨーグルト消費国ブルガリアのヨーグルト消費量は、日本の5倍以上だそうですから、私たちももっと食べてもよさそうですね、ブルガリアの食卓には毎食ヨーグルトが登場するそうです。

それから、患者さんだけでなく、私たちも長いあいだ「乳酸菌は生きて腸まで届かなければ意味がない」と信じてきましたが、最新の研究では、加熱されたり、胃酸に触れたりして死んでしまった菌でも効果があることがわかってきました。最近「焼きヨーグルト」という食べ方も人気があります。カッテージチーズのような食感で、サラダによく合います。加熱しても乳酸菌の効果が期待できるそうなので、チーズより低いカロリーですしお奨めです。

また、ヨーグルトは種類が多いので、どれを選べばよいか悩まれる方も多いようです。ヨーグルトの乳酸菌そのものにもさまざまな有効成分が認められていますが、乾燥肌や肌荒れ、ニキビを改善したい場合には、「コラーゲンペプチド」と「ミルクセラミド」が強化されたヨーグルトを選ぶとよいと思います。とくに大人のニキビには乾燥性敏感肌の人にできやすいので、お奨めしたいですね。いまや「機能性ヨーグルト」を目的によって食べ分けるのがトレンドになってきていますが、キャッチフレーズだけでなく、臨床試験の結果がしっかり出ている製品を選ぶことも重要です。

これは私が実際に治療をしていて実感することですが、いくら高品質の化粧品を使っても、角層の状態が悪ければ高い効果は期待できません。むしろスキンケアはシンプルにして、「内側からの保湿」に気を遣うべきかもしれません。若い女性には、食生活にもう少し投資するようにアドバイスしたいですね。

Q、保湿効果だけでなく、肌へのさまざまな作用が期待できそうですね?

新しい知見としては最近、市橋正光先生(再生未来クリニック神戸院長)が、「コラーゲンペプチド」と「ミルクセラミド」を含むヨーグルトの継続的な摂取によって紫外線に対する抵抗性が上がるという非常に興味深いデータを発表されました。これまでも、抗酸化作用をもつビタミンCとE、ルテインやリコピンをサプリメントで摂取すると、MED(minimal erythema dose:最小紅斑量)が上がることが分かっていました。日常的な食生活のなかで摂取できるヨーグルトにもMEDを上げる効果があるというのは驚きでした。作用機序の解明にはこれからということですが、今後の展開にますます期待がもてそうです。