雑誌『女性セブン』2022年3月10日号(2022年2月24日発売)

特集〝実は侮れない!残念なできもの事典″(P109~113に掲載)に慶田院長の監修記事が掲載されました。

気づいたら、新たにポツポツができていて...など、年齢とともに得体の知れない〝できもの″が増え、気にしている女性は多いと思います。とはいえ、見た目に支障がないからと、放置をしている人が多いのも現状。しかし、放っておくと重篤な病を引き起こすケースもあります。そこで今回は、良性から悪性まで、知っておきたい20種のできものとその対処法を紹介します。

■それって実は、やっちゃダメ!!良性と悪性で20種以上
一口に「できもの」といっても、良性だけで約100種、悪性まで含めると200種近くあります。50代から増えてくるできものとして多いのは、老人性疣贅(老人性イボ)、老人性脂腺増殖症、アクロコルドンなどで、年齢を問わず良くできるものは、色素性母斑(ほくろ)、稗粒腫、粉瘤などです。これらはいずれも良性の腫瘍です。たとえ良性でもできものはあくまでも腫瘍です。自然に取れることは、まずありません。しかし、ひっぱったりひっかいたりしたら取れると考える人や、洗顔料や化粧品、民間療法などで取れると勘違いしている人もいらっしゃるようです。できものには種類が多く、悪性のものもありますから、自己判断し、無理に取ろうとしてはいけません。ホクロだと思って鍼灸治療で焼き取ろうとしたところ、実は悪性腫瘍で症状を悪化させた患者様もいました。たかが、イボやホクロだろうと侮って放置したり、自力でなんとかしようとせず、必ず皮膚科専門医に相談しましょう。

■正体を知れば不安も軽減。知っておくべき大人のできもの20選
【良性】
◇色素性母斑(ホクロ)
大人になってから全身にできることもあり、サイズは直径10mm以下が多いです。
良性の腫瘍で、色素を作る細胞が増殖したものです。生まれつきある場合もありますが、成長の過程や大人になってからもできる場合もあります。多くは直径10mm以下で、平らなタイプから中央が膨らんだものまで形状はさまざまです。ほくろの中に毛が生えることもあります。色は肌色、茶色、グレー、黒などで全身にできますが、足裏や足指の場合は要注意です。ホクロとよく似た形状ですが、悪性黒色腫が時々混ざっていることがあります。気になったら皮膚科で相談してください。
治療法:メスによる切除術、『CO2レーザー手術』など。

◇老人性脂腺増殖症
顔(鼻やおでこ、頬など皮脂が分泌させやすい部分)脂漏部位にできやすく、中心部がへこんでいるのが特徴です。
中心にへこみのある6mmぐらいの膨らみが皮膚に現れます。これは良性の腫瘍で、集中してできることもあります。色は黄色や白色で、特に痛みやかゆみなどの症状はありません。中高年以降、増えることから加齢が原因とされています。
治療法:メスによる切除術、『CO2レーザー手術』など。

◇老人性疣贅(脂漏性角化症/老人性イボ)
全身にできるが、特に日光に当たりやすい顔面、頭頸部、背部、手の甲などに多くでき、3㎝サイズになることもあります。
遺伝的素因や、日光(紫外線)を浴び続けることで起こる光老化が原因とされています。加齢とともに増数しますが、20代から出現することもあります。大きさが2~3㎝になる場合もあり、表面に細かな凹凸があるのも特徴です。
治療法:メスによる切開術、冷凍凝固法、『CO2レーザー手術』など。

◇粉瘤(表皮嚢腫/アテローマ)
全身(特に頭部、顔面、背部など)にできやすく、ドーム型の突起物で直径数㎝以上になる場合もあります。
皮膚の下に袋状の嚢腫ができ、そこに角質や皮脂がたまってできた良性腫瘍の総称です。年齢に関係なく発症するポピュラーな疾患です。初期は痛みやかゆみなどの症状はほとんどなく、直径数mm程度の白色や肌色の小さなしこりです。触ったり潰したりすると、中央の穴から細菌が侵入して炎症を起こし、痛みを伴うこともあります。これを炎症粉瘤や化膿性粉瘤といい、抗生剤内服などの治療が必要になります。
治療法:メスによる切除術。

◇稗粒腫
まぶたや目周りにできる白いツブツブはこれです。まぶた、頬、額、陰部にできやすいです。
直径1~3mmで、中にクリーム状の物質が入った袋が神秘ないに存在する良性腫瘍です。白色の小さな粒のように見えることから、白ニキビと間違われやすいですが、数か月変化がなければ稗粒腫の可能性が高いです。ほとんどが誘因なく突然発生しますが、やけどや手術、けがなどの治った後に発生する場合もあります。
治療法:針で穴を開けて圧出、『CO2レーザー手術』

◇アクロコルドン(軟線維腫/スキンダック)
柔らかな突起物で、首や胸、脇の下などに多く発症します。
良性腫瘍で、痛みやかゆみがないです。細い茎が皮膚から垂れ下がったり、盛り上がったりした状態の突起物で、通常直径1~3㎝ですが、5mmを超えるものもあります。主な原因は、老化や遺伝的要素、紫外線、摩擦などです。若い世代にもみられるが、中年以降の発生率が高いです。
治療法:はさみによる切除、冷凍凝固法、『CO2レーザー手術』など。

【炎症】
◇ブラックコメド(黒ニキビ/開放面皰)
顔、胸、背中などに出来やすく、毛穴の詰まりが原因の黒く目立つ大人ニキビです。
角質が毛穴を塞ぎ、過剰に出た皮脂が毛穴にたまり、酸化して黒くなった状態です。若年者の場合、皮膚の常在菌が増えると炎症を起こすので、早めに治療が必要です。高齢者の場合、放置すると大きくなりますが、炎症を起こすのはまれです。
治療方法:内服・外用薬、『ケミカルピーリング』、『CO2レーザー手術』など。

【ウイルス性】
◇尋常性疣贅
おもに顔や手首、爪のまわりに出来やすく、手足の小さな傷からウイルス感染し発症します。
ウイルス感染によるイボで、ヒトパピローマウイルスが皮膚の小さな傷から侵入。小さな湿疹ができた後、ドーム型に盛り上がってえんどう豆くらいの大きさに変化します。痛みはあまりありませんが、足の裏にできるとなんか踏んだような痛みを感じます。表面は固くなってかさつき、黒や茶の色素沈着が起こることもあります。大人への感染も多いです。
治療方法:外用薬、冷凍凝固法、電気焼灼、『CO2レーザー手術』など。

◇青年性扁平疣贅
免疫力低下がウイルス感染の要因で、顔や手の甲、足(ひざから足首)等にできやすいです。
若い女性に多く見られる疾患で、免疫力の低下などによってウイルス感染します。2~10mほどの肌色の平たい発疹が多発。線状に並ぶのが特徴で、時にかゆみと赤みが出現して急速に消失する場合もありますが、難治性で治療が数年に及ぶこともあります。
治療方法:自然に治るケースが多いが、かゆみや赤みなどの症状が続く場合は、内服薬を服用。冷凍凝固法、『CO2レーザー手術』などを行う場合もあり。

◇尖圭コンジローマ
口腔内、正規、肛門周囲など、皮膚と粘膜の境界部に出来る事が多く、主に性行為によって感染し、治るまでに時間がかかります。
皮膚や粘膜の傷からウイルスが侵入して感染し、あわ粒くらいのイボができ、徐々にカリフラワー状の大きなイボに変化していきます。色は薄いピンクか茶色で、治りづらく、人にうつるうえ、子宮頸がんの原因にもなるので即受診をおすすめします。子宮頸がんワクチンで予防可能です。
治療方法:外用薬、冷凍凝固法など。発がんリスクが高いため、完治には時間がかかります。パートナーと同時に治療を行いましょう。

上記のように、良性のできものの治療法はさまざまです。良性の場合、放置しても健康上の問題はないですが、顔の目立つ部分に出現して気になる、着替えの際にこすれて出血するなど、生活に支障が出れば治療が必要になります。切除する場合、大きさや深さによって適する治療法が違うので、主治医と相談して決めましょう。
老人性イボに対しては、マイナス196℃の液体窒素を当てて凍傷を起こして患部を取り除く冷凍凝固法は保険適用されますが、数回の治療が必要でシミが残りやすいです。
保険適用外の治療法には、レーザーを使ってホクロやイボの組織を蒸散させで除去するCO2レーザー手術があり、1~2mm未満のホクロを1か所切除するのに6000円ほどかかりますが、傷痕は圧倒的にきれいです。これら良性腫瘍のほかに、毛穴に酸化した皮脂が詰まるブラックコメドは、針や『CO2レーザー手術』で除去することが多く、また、尋常性疣贅、尖圭コンジローマなどのウイルス性のイボには、冷凍凝固法や専用の外用薬なども用いられます。

■ホクロは厄介?良性でも侮れない!ホクロと老人性イボの手術にはこれほど違い。
ホクロには複数回の手術が必要です。ホクロ切除にも老人性イボの切除にも有効な治療法の1つに『CO2レーザー手術』があります。ただし、ホクロの切除の場合、一度の手術で終わらない場合が多いです。老人性イボは、表皮内(表皮、真皮、皮下組織3層から構成される皮膚のいちばん上の部分)にあるため、1回の『CO2レーザー手術』でとり切れることが多いです。しかし、ホクロの場合、特に小児期に現れたものは、腫瘍細胞が深くまで存在するため、複数回に分けて手術する必要があります。傷痕の隆起、陥没や術後に赤み継続などが起こる可能性もホクロの方が高いと言えます。ただし、老人性イボでも10mmを超える場合は、2~5分割して段階的に除去する場合もあります。ホクロもイボも小さいうちの切除がおすすめです。

是非ご参考になさってください。


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