雑誌『読売家庭版』2020年6月号No.666(掲載ページP18~P19)

特集【ココロとカラダの相談室 肌老化を左右する『光老化』のメカニズムと対策】に慶田院長のコメントが掲載されました。

Q顔のシミが目立つようになってきました。原因を教えてください。
シミやしわといった肌の老化をもたらす原因の8割が、太陽光をはじめとする光に起因するので、近年は『光老化』と呼ばれています。それを如実に表すのが、二の腕や太ももなどでしょう。太陽光を浴びる機会が少ないので、年をとっても白く柔らかく、シミやしわなども目立ちません。しかし、顔に太陽光を当てないようにするのは難しいものです。まずは太陽光が肌に与えるメカニズムを知り、治療や対策に取り組んでいきましょう。

Q太陽光が肌に及ぼす影響はどのようなものですか?
太陽光は波長が短いものから順に、紫外線B波(UVB)紫外線A波(UVA)、可視光線(ブルーライトを含む)近赤外線と続きます。肌の老化に最も影響するのが紫外線B波、A波です。B波では肌が炎症を起こし、日焼けやシミ、そばかすなどの原因となります。一方、A波はさらに奥の真皮層に到達し、肌にハリや弾力を与えるコラーゲンなどを破壊し、しわやたるみを引き起こします。紫外線の影響は外見の変化にとどまりません。細胞の遺伝子が傷つくことで発がんを促します。皮膚がんの多くが顔や頭部など、日光が当たりやすい場所に生じています。シミやホクロに見えるものが「急に大きくなった」「形がいびつ」「色むらがある」「グジュグジュしてきた」といった場合、皮膚科専門医のいるクリニックに受診してください。ほとんどが良性ですが、まれに悪性ということがあり、早期発見が予後の鍵となります。また近年の研究により、紫外線以外の太陽光も皮膚に障害を与えることが解明されました。無害といわれていた可視光線領域のブルーライトがシミやくすみの原因となり、近赤外線の一部がたるみや赤ら顔を進行させます。

Qシミの治療法を教えてください。
シミの治療にはレーザー照射※1をはじめ、光治療(IPL)※2、美白剤の導入や注射※3、ケミカルピーリング※4などが用いられます。なかでも一般的なのがレーザー照射です。従来の熱によってメラニンを壊すという手法は、炎症後の黒ずみが長期に残ることがありましたが、近年は衝撃波でメラニンを微粒子に粉砕する「ピコセカンドレーザー」が実用化され、痕が残りづらくなりました。
ピコセカンドレーザー」は当院でも自信をもっておすすめしている最先端治療です。最大の特長はその照射時間(パルス幅)にあります。これまでシミ治療の主流だったQスイッチレーザーの照射時間が「ナノ秒(10億分の1秒)」に対して、ピコレーザーはその1000分の1秒にあたる「ピコ秒(1兆分の1秒)」単位の照射に進化しています。中でも当院が採用している、シネロン・キャンデラ社製の『PicoWay(ピコウェイ)』は他社製と比較して、最も短い照射時間(パルス幅)を実現し、世界的にも切れ味が良く高性能と評価が高い機種です。この極めて短い時間内での照射により、熱発生がほとんどなく、皮膚へのダメージが少ないため、日本人で問題となる照射後の色素沈着が圧倒的に生じにくく、出たとしても軽く短期間で消失する点が優れています。
現在、肌質改善治療(『フォトフェイシャル』・『ジェントルレーズプロ』)と併用して、気になる部分にのみ照射する『ピコスポット照射』を行う方が増えています。照射後は、テープ保護が不要で、軟膏を塗るだけの簡単なケアでOKです。また、かさぶたは薄くて剥がれやすいのでストレスもありません。『ピコウェイ』は、532nm(KTP Nd:YAGレーザー)と1064nm(Nd:YAGレーザー)の2つの波長を搭載し、狙ったターゲットに最適な波長を使い分けることで、肌の浅い層(シミ・そばかす等)から、深い層(あざ・ホクロ・アトピー性皮膚炎のダーティーネック)まで幅広い治療が可能です。1~2mmの小さなホクロは、1~2回で消せる可能性が高いので、皮膚を削りたくない方、ホクロが多い方にもおすすめです。
『ピコレーザー治療(ピコウェイ)』には、3つの照射方式があります。
① 『ピコスポット照射』→シミ取り・ほくろ除去
② 『ピコトーニング照射』→美白・ブライトニング・肝斑
③ 『ピコフラクショナル照射』→ハリ・キメ・毛穴・ニキビ跡・小じわ
これらを組み合わせることで、シミ・肝斑・くすみ・ニキビ跡・毛穴・小ジワなど肌色・肌質のお悩みを総合的に改善して、美肌レベルを上げることが可能です。さらに内服薬化粧品などを用いたホームケアも取り入れていきます。お悩みの方は、是非お気軽にご相談にお越し下さい。

Q光老化の対策法はありますか?
年齢問わず、紫外線などの有害な太陽光への対策を行うことで光老化の影響を軽減できます。要となるのが日焼け止めの適切な使用です。製品に「SPF」「PA」という表示があります。「SPF」はUVB、「PA」はUVAの防御レベルを表し、数値や+の個数が増すほど効果が高いです。実使用で「SPF15」「PA++」の効果が出るように塗れば完璧ですが、表示の数値はかなり多めに塗布した場合のもので、多くの人が4分の1程度しか塗布されていないのが現実です。そのため、最低2回は重ね塗りをしましょう。また、同じ量でも効果の高い「SPF50」「PA+++」以上の高機能商品をおすすめしています。冬場や雨天でも一定量の紫外線が降り注ぎますから、気を抜かずに対策が必要です。しっかりケアすることで
3年後、5年後の皮膚の老化予防になります。食事やサプリメントも有効です。ビタミンA、C、Eやポリフェノールが多く含まれる食材を日常的に摂りましょう。「飲む日焼け止め」ヘリオケアといわれるUV対策用サプリメントもあります。市販品より処方薬のほうが、有効成分が多く含まれているため、皮膚科専門医の在籍するクリニックへ受診しアドバイスを受けましょう。

※1メラニンに対する吸光性が高い単一波長のみが照射される医療機器。照射時間の長さよってやや長めの「ナノセカンドレーザー(Qスイッチレーザー)」と短い「ピコセカンドレーザーに分かれる。
※2光治療(IPL)=広域の波長の光が束で働き、シミやメラニン色素やヘモグロビンの赤い色素を穏やかに破壊
※3美白に有効な成分を配合した薬剤を注射または機器で導入する
※4薬剤を肌に塗って表面の角質を少しだけ溶かし、皮膚の再生を促す。

慶田医師からのポイントアドバイス
医療機関選びは慎重に
加齢とともに増えるシミやあざの解消は、医療機関での治療が比較的手軽に行えるようになってきています。ただし、症状や治療法の見極め、アフターケアの体制などに、医師の経験値が問われます。また、レーザー機器のランクなど設備のレベルも結果を大きく左右します。医療機関の選択にあたっては、「大学病院で5年以上の研修後、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医を取得」ならびに「美容分野に通じた医師が治療にあたる」「症状に応じた治療が可能な各種機器をとりそろえている」などを目安にするとよいです。

【ふだんから心がけたい紫外線対策 4つのポイント】
日常生活で少しの配慮をすることで、後々肌に大きな違いが生まれます。
肌を守るために習慣にしたい4つのポイントをご紹介します。

① 日焼け止めで肌をガード
・「SPF50」「PA+++」以上を使用
・二度塗りする
・2~3時間で塗りなおす
・季節・天候問わずに使用する

② 帽子やサングラス、長袖の衣装を着用
・濃色で、生地が厚く目が詰まったものを選ぶ
・白などの淡色の衣類はUVカット加工のものを選ぶ

③ 紫外線の強い時間帯の外出を避ける
・紫外線量が多い午前10時~午後14時の外出を避ける
・買い物や散歩、ウォーキング、屋外プールなどは朝や夕方にする

④ ビタミンA、C、Eやポリフェノールを摂る
・ビタミンA、C、Eは、トマト、ニンジン、カボチャ、ブロッコリー、小松菜などの緑黄色野菜やイチゴ、ブルーベリー、レモンなどの果物から摂る
・ポリフェノールはコーヒー、高カカオチョコレート、ブドウなどから摂る
「飲む日焼け止め」ヘリオケアを外出30分前に摂る


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