2018年8月10日

新聞『日本食糧新聞』2018年8月10日 4面

特集「拡大するインナービューティー市場 食べるセラミドの可能性を探る」
に慶田院長のインタビュー記事が掲載されました。

現代女性は、さまざまな外的因子や内的因子によって肌のトラブルを抱えている人が多いと言われ、肌ケアに対する関心が高まっています。肌の潤いやバリア機能に欠かせないセラミドは、最近話題となっている成分のひとつ。「ゆらぎ肌」に対するインナービューティーにも効果的です。そこで、皮膚科専門医の立場から、皮膚のバリア機能とセラミドの有効性について解説しました。

 ― 先生は美容皮膚科医院を開業されスキンケアの第一人者の立場からバリア機能の重要性を訴えておられ、特にアトピー性皮膚炎などの疾病はもとより、現代女性の関心が高い「ゆらぎ肌」の改善にも取り組まれておられるとお聞きしましたが...

私は1999年に東京女子医科大学卒業後、同大学皮膚科学教室に入局しました。そこではバリア機能に注目した初めての皮膚科の医局だったことから、入局後は主にアトピー性皮膚炎やバリア機能について学びました。そして現在は美容に特化したクリニックを開業して皮膚科領域の中でもニッチな領域で活動しています。当院の美容皮膚科のコンセプトは、「メスを使わずに見た目年齢をマイナス7歳に」であり、アンチエイジング(抗老化・抗加齢)にとどまらずリバースエイジング(若返り)という考え方で取り組んでいます。
クリニックでの診療の他に、広くスキンケアの重要性を伝える仕事にも力を入れており、その中で最近話題となっているのが「ゆらぎ肌」と呼ばれているものです。昨年1年間でもかなりの数の雑誌でその特集が掲載されており、私自身もその監修に当たったり、取材を受けたりすることが増えていることから、「ゆらぎ肌」というものがトレンドとなっていると感じています。アンケート調査でも「常に敏感である」、「時々敏感である」と答えた人は8割を越えていて、実際に当院に通って来られる患者さんの数も増えています。
このゆらぎ肌、敏感肌という言葉はもともと皮膚科の用語ではなく、乾燥肌という表現を使っていました。これは角層が水分を保持できず乾燥している状態を表しますが、同時にバリア機能も低下していると考えられます。
このバリア機能の保持に大きく関わっているのが角質細胞脂質の半分を占めるセラミドで、これをスキンケアで補うことでバリア機能を高める効果があります。
セラミドは動植物に含まれる脂質ですが、近年はその経口摂取によって全身のバリア機能が改善するという報告も多数出てきています。

 ― そのバリア機能について、皮膚の構造面から説明していただけますか。

皮膚は生体防御、体温調節、水分保持、感覚器官、免疫、紫外線防御、緩衝材、エネルギー備蓄など重要な役割を持つ最大の臓器です。その構造は表皮、真皮および皮下組織の3層構造となっています。表皮は下から基底層、有棘層、顆粒層、角層の4層に分かれていて、基底層の細胞が分裂して有棘層となり、顆粒層でさまざまなバリア物質が作られ、脱核して角層となり剥がれ落ちていきます。これが28日から45日で繰り返されることで、皮膚は常に生まれ変わっており、これをターンオーバーと言います。
この一番外側の部分、角層は16~20%の水分を含み、乾燥、刺激、アレルゲンなどによる悪影響を跳ね返す「バリアの最前線」です。しかしその厚さは0・02㎜と食品用ラップ1枚に相当する薄さしかありません。その中でバリア機能の立役者となっているのは、皮脂膜、NMF(天然保湿因子)、角質細胞間脂質の3要素です。皮脂膜は天然のクリーム、天然保湿因子は水を抱えるスポンジ、そして角質細胞間脂質は水を抱え隙間を埋めながら角質細胞を接着する機能を持ち、その主成分がスフィンゴ脂質(セラミド)なのです。
角質細胞と角質細胞間脂質(セラミド)の関係は、レンガとモルタルに喩えられます。角質細胞(レンガ)と角質細胞間脂質(モルタル)がきっちりとしていれば、雨漏りがしないように外的刺激を防御できます。これらのバリア物質を損なわない理想的なスキンケアを行えば、ゆらぎ肌や敏感肌を予防して潤いのある肌を保つことになります。このように角層は天然のバリアと言え、そしてバリア機能を保つことが、美肌の基本です。

 ― なぜ、敏感肌(ゆらぎ肌)が増えているのでしょうか?

加齢、環境、生活習慣などが原因となりますが、特に生活習慣が関係します。バリア機能の低下につながる栄養不足、睡眠不足、ストレス、運動不足が現代女性に多く見られることが、結果として肌トラブルを起こす内的な要因となります。これは、工場にたとえると、①栄養不足(原料不足)=NMFや角質細胞間脂質の原料や部品が供給不足、②睡眠不足(操業時間不足)=肌を十分に修復できない、③ストレス、運動不足(エネルギー循環の滞り)=自律神経の乱れによる血液循環の停滞が生じているようなものです。
結果、皮膚のターンオーバーが乱れ、バリア機能が低下します。即ち工場を正常に稼働させることが、ゆらぎ肌の予防・改善につながります。

 ― 食生活に対するアドバイスはありますか?

最近の若い女性は栄養不足が深刻です。昨今の糖質制限ブーム、油抜きなどの極端なダイエットなどにより、食事の内容が偏っている若い女性が増えています。やはり美肌のためにも五大栄養素をまんべんなく摂取することは重要で、加えて抗酸化作用のあるポリフェノール類、腸内環境を整える食物繊維や発酵食品などの摂取も欠かせません。

 ― 最後に今後のスキンケアの方向性やセラミドの経口摂取による可能性についてお願いします。

忙しい現代社会に生きている私たちには肌のバリア状態が乱れるような内的要因、さらに外的要因が多く、正しいスキンケアを行い、生活習慣を調えることが大事です。
さらにもうひとつはインナーケアとして有効成分を補うことも有益です。最近では塗る肌ケアで有効とされるコラーゲン、ヒアルロン酸、セラミドなどを経口摂取することでも角層の水分量などの改善効果に関するエビデンスも増えてきています。その中でセラミドはバリア機能にとっては非常に重要な素材と考えています。このような情報に関しては、私のような皮膚科医からだけでなく、さまざまな飲料や食品の商品化を通じて広く啓発されていくことが理想的ではないかと考えています。

最近では、機能性食品としてセラミドを配合したドリンクやサプリメントなども発売されています。インナーケアとして手軽に有効成分を補うために、活用すると良いでしょう。
是非、参考になさってください。

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